4階に上がった後は、田俊VSジャバールとリーVS池漢載のシーンが交互に出てきます。

○4階の田俊VSジャバール

田俊が4階に上がってみると、ジャバールはロングガウンを着て座っています。
なぜか親指をチョンチョンしています。
立ち上がってガウンを脱ぐところは「生と死」の通りで、NGは肘がひっかかるのと全部脱いでハダカになってしまうのと2回あります。

「ワラ〜ッ!」と向かって行くところあたりはクローズ版の通りです。
 おもしろいのがサンドバッグに横蹴りで穴を開け、「砂」が落ちるシーンです。
3回のカットのうち1回はブラーンと障子側に揺れた後、思いっきり田俊の背中にブチ当たるんです。
田俊はマジメに演技を続けていて、さも何もなかったような表情を繕っていましたがまあNGですよね。

○3階のリーVS池漢載

いきなり3階に戻ります。
お馴染みの砂が落ちるシーンです(8テイクもあり)。その後天井が映し出され、桟の隙間から砂が落ちる様子が見えます。
しかもその砂の落ちる位置が少しずつ横に移動していき、それをカメラは追っていきます。

○4階の田俊VSジャバール

画面左に寝ころんでいる田俊が「イモムシコーロコロ」をしながら画面右へと転がっていきます。
それを追いかけて巨大なジャバールの足が田俊を踏みつけようと追いかけていきます。
ヒーロー特撮物の怪獣の足のようです。このこととサンドバッグの「砂」が3階に砂が落ちる原因だったのです!ナルホド。

追いつかれて踏まれそうになる田俊が足を受け止めて、押しのけます。
この後クローズ版の「田俊階段駆け上り−ジャバールのジャンプシュート−首締めてぶら下げ」となりますが、
このシーンもろにワイヤーを使っているため、投げ飛ばされた田俊はワイヤーで宙ブラリン、ミュージカルのピーターパン
のように空をクルクルと舞います(笑)。

ワイヤーが相当体に食い込んで痛いらしく、田俊は脇の下をしきりに押さえていました。
お馴染みトランポリンを使ったショットの後、田俊はヨロヨロと立ち上がり、苦しそうに胸を押さえながら階段の陰に隠れていきます。
ジャバールは余裕の薄笑いを浮かべながらノシッ、ノシッと近づいてきます。

 その時の田俊の表情がもう泣きそうな顔で、何度も何度もリーの名?を呼びます。
口の形は日本語的にはセンセーッ!という感じに見えましたが、たぶんツェンホァー(振華)が正解なんでしょう。

田俊の表情から「こんな怪物にはかなわない。リーよお願いだから助けてくれぇ!殺されちまうよお!」といった表情です。

○3階のリーVS池漢載

田俊の声に反応し、階段の方に顔を一瞬向けるリー。
その隙に池漢載はリーにハイキック、受けてお返しの池漢載へのハイキックの後、池漢載の足を取ろうとして
蹴られてひっくり返るクローズ版映像につながります。

 ここで倒れているリーのカット開始のカチンコが傑作です。
寝ころんでカチンコの上に顔を載せたリーが白目を剥き、舌を出していわゆる「ナマクビ」状態をやってるんです(笑)。
これは「燃えドラ」未公開映像の中に似た物がありました。ナマクビが好きなんでしょうか?(笑)

その後クローズ版の通り、池漢載にバックブリーカーでトドメをさし、陳元の死体のある階段へ。
階段のシーンはトリミングされておらず、やはり死体はモロに映っていますし、リーのオニヅカタイガーの靴も余裕で映っています。
 死体に目をやったリーは4階の異常な何らかの「音(声)」に反応し、陳元の左足を跨いで階段を上っていきます。
●ジャバール戦:未知の殿堂

〔闘いの序章〕
 階段を上がりきったところからは、「レジェンド」や「生と死」のとおりで田俊の死体がリーに向かって投げられてきます。
うつ伏せに倒れた田俊は浮かした腰をバタッと落として絶命。

 リーに対峙するジャバールは腰に手を当てて立っていて、偉そうにアゴを少し上に浮かせています。
その後「生と死」のリーの構え。

お馴染み胸を蹴られるシーンの後、いわゆるジャバールアイ(目線)からのたうち回りながら何とか起きあがろうとするリーが映ります。

胸にははっきりと足形が見えます。
このシーンが傑作で、ゆりかごのような安楽椅子に座って揺れているジャバールの目線を現すため、画面が大きく縦に揺れるんです。
その揺れがもっとも上に行ったとき、田俊の死体がモロに映っています。
だからクローズ版ではそっくりさんの映像に入れ替えたんですね。

  
 リーを蹴り飛ばしたジャバールは、余裕で安楽椅子を揺らしながらリーを見つめる。


その後はほぼクローズ版通り。足をかけてジャバールを倒します。
違うのは倒されたジャバールの顔のアップがあり、なんとそこで「ニヤリ」と笑うところです。
暗くシリアスな雰囲気のクローズ版ではこのカットは許されないのでしょう。

倒され足を曲げた形で固定されていたジャバールは、リーを遙かに上回る怪力で足を徐々に延ばしていきます。
しかし、のばしきる前にリーが諦めて足をほどいて立ち上がり、構え。
そしてジャバールのアグラをかいたままのご存じ「待て!」のポーズとなります。

このリーが立ち上がるシーンはクローズ版にもあり、その時画面右下の床の畳がヘンにシワになっているのに気づいている方も多いと思います。
実はこれはシワではなく、その後二人を下がりながら捉えるために設置されたカメラ用のレールを隠す布?だったんです。


〔激戦へ〕

立ち上がったジャバールは腰に手をあて、「The Intercepting Fist」とほぼ同じようにしゃべります。
お互いの背後からのアングルで話すシーンとアップがあり、リーがしゃべるシーンは「The Intercepting Fist」よりも少し長いです。

「よくここまで上がってきたな。一応ほめてやろう。ただしオマエの命もここまでだ。」(ジャバール)
「仲間はみんな死んでしまった。でも私は負ける訳にはいかないんだ!」(リー)
というような感じではないでしょうか。

ジャバール肩越しにリーがしゃべるショット。逆にリーの肩越しにジャバールがしゃべるショットもあった。

 ジャバールの連続回し蹴り。
リーは回りながらどんどん下がって(カメラもレールで画面右に移動しながら)最後は階段下からのアングルで蹴りを
受け、中段(ミゾオチ)へのパンチシーンとなります(「怒りの鉄拳」DVDと同じ)。

 このシーンは変わった別テイクが2回あり、最後に「右上段回し蹴りを両足を大きく広げて踏ん張った形で左手で受け、
右手で中段へのパンチ」ではなく「右上段回しを受けることなく、画面左にピョーーンと横っ飛びしてよけ、右パンチ」すると
いうもので、まるで孫悟空を思わせるような身軽な印象を受けました。

また「怒りの鉄拳」DVDにある地面を「ダンダン」と叩き、立ち上がって右手をヒラッと振って構えるシーンは、体をこちらには
向けない全然違うカットがありました。

(ここからなぜか例の光のシーンだったのですが、ストーリー上おかしいので後に回します)

ジャバールの巴投げ、花瓶が割れてリーの顔を花瓶に押しつけるシーンです。
ここはクローズ版でも特に「?」なシーンでしたが、特に種明かしはなくそのまんまでした。

ジャバールに頭を押さえられたリーはもの凄い背筋力を使って足を45゜どころか、ほぼ垂直に近い角度まで足を上げていきます
(ただしこのテイクは横に倒れてNG)。クローズ版では影しか映っていませんでしたが、ラフカットでは足の先まですべて映っているものがありました。
ワイヤーによる釣りトリックはないようでした。スゴイ!

で、次のシーンがクローズ版にも2回出てくるクルっと回ってジャバールの耳攻撃です。
この2つのシーンの間には何もなく、ちょっとおかしなシーンながら展開はクローズ版通りのようです。

このシーンはNGが多く、割れた花瓶を目前に行う超人的な足上げは、何度も失敗しています。
一旦体を平行にし、全身に力を込めてからさらに足をあげる、というような感じで(見てるこっちも力が入る)、
あげた状態から足をおろす時には付き添いのスタッフが毎回助けに出てきていました(ヘタすると花瓶が顔にささってしまう)。

この後、連続蹴りをするジャバールがズッこけて歯を出して笑うジャバールNGあり。

〔意外な怪物の弱点〕

シーンはおおむねクローズ版の通りに進み、いよいよ障子のシーンです。

ジャバールに殴られ、障子の方に飛ばされてきたリーは、障子に行き着くことなく前のめりに倒れ、アタフタと立ち上がり、
障子に爪を立てるようにひっかきながらズリ落ちていきます。
もちろん障子は破れません。

これが2カットあった後、障子に直接ツッこむクローズ版のアップの映像になります。
 よくよく考えると、これらは編集でうまくつなげると、ジャバにブッ飛ばされる→一旦障子前で倒れる→起きあがりながらも
よろけて障子へ→アップで障子に穴を開けるという展開でうまくつながるんじゃないかと思います。

このツッコミシーンもNGが1テイクあり、リーの拳が当たった部分である2カ所しか穴が開かないのがありました。
その後OKテイクになるのですが、そのOKシーン直前に一瞬ですが、中途半端に破れた障子を補修するスタッフが2人映ります。

左に赤いタートルネックを着たチャップリン・チャン、その右に衣装のままの田俊が映っていたように思うのですが、
田俊の方はちょっと自信がありません(たぶん違うと思います、いる訳ないし...)。

ジャバールは明らかにまぶしそうです。それを見たリーはズッタッタッと前へ(クローズ版の通り)。
殴って殴って襟首つかんで殴って、、、のシーン(野球の投球のように、大きく左足を上げて反動をつけ、右手でアッパー
気味に殴るという超オーバージェスチャーのテイクあり)。
 


 ジャバールは倒れたまま首を振り、リーを見上げます。ジャバールアイ(目線)でファイティングポーズをとるリーの
画像が、ピンボケしたり、ピントがあったり、、、、を何度か繰り返します。
すでに目がちゃんと見えなくなってきているような演出です。

 しかし、闘いはまだ続き、ジャバールは立ち上がります。

 ロングショットでジャバールの横蹴りを何度か受け、最後に距離を詰めて腹を殴って倒してしまうクローズ版シーン。
ジャバールは立ち上がりますが、右手の拳を強く握りしめながら左手で階段の手すりをまさぐります。

そしてリーが構えながら画面右に少しずつ移動していきます。ジャバールは明らかにまぶしそうな表情と仕草。

 そしてクローズ版の中で、Dr.ランドのロウ人形にゆっくりと近づきつつ、顔の右半分(画面だと左)が明るく照らされているシーン、
そしてなぜか画面がストップするシーンがありますが、あれがきて、リーは障子の方向に完全に振り返ります。

そして障子の所までに戻って、破れた障子の周りをズボズボ破いて振り返るシーンにつながります
(「レジェンド」と同じでNG、別テイクなし)。

次にジャバールの腹から上の大写しになり、体に映っている破れ障子の大きな白い光の周りに1,2,3,4と光の玉が
電気が点灯するように増えていきます。
「ド・レ・ミ・ファ」と音をつけたくなるような感じです。

眩しさが増していく所をうまく演出していますが、これはドラキュラ物の映画のラストで光を徐々に浴びて苦しみ、
絶命するシーンを完全
に彷彿とさせる物でした。
 
〔怪物の正体〕

 ジャバールは両手をパーにして顔を覆います。サングラスをしたままの顔アップの後、階段の影に回っていきます。
階段の影に隠れたジャバールはサングラスの下の目をこすっています。

そこへリーの飛び蹴り!サングラス飛ぶっ!メガネ、メガネはどこっ??
両手をかざしながら立ち上がって階段の真下へ。ここでまたジャバールアイ(目線)で階段ごしにリーを見ます。
これがお馴染みクローズ版で、物陰を通して険しい表情をしてDr.ランドのロウ人形に近づいていくカットと同じ物です。
しかも赤いフィルターがかかっていて画面は真っ赤です(フィルターなしテイクも2回あり)。

そして!顔の超ドアップ(頭とあごの先が画面に入りきらない!)、最初はまともなジャバールの顔が2秒ほど、その次のカットは?

猫のような目に!!!!!!!

これは白いピンポン球を目にはめ込み、猫のような縦長の瞳をピンクに塗って作ったんじゃないかと思えるようなものでした。
ピンクはショッキングピンクに近く、口紅のピンク色といえばわかるでしょうか?残念ながらちょっとチープな感じがしました。

リーは少しずつ近寄っていきます。ジャバールは階段をよろけながら伝っていき、結局光の当たる場所に一周して出てきてしまいます。
リーはファイティングポーズを少しゆるめながら、少しやさしさをこめて何かしゃべります。

「いったい、どうしたんだ?」的な感じ。
 問いかけを受け、顔を手で覆いながらジャバールはかなり長い間しゃべります。

おそらく訳あってこの塔にやってきたこと、ずっと塔にこもり宝の地図?を目当てにやってくる侵入者達と闘わざるを得ない事情を話したのでしょう。
しかし、そんな中でもリーの油断するのを待っていたのか、しゃべっていたジャバールはいきなりリーに殴りかかります。

 そしてクローズ版にもあった
「このパンチをよける→右のロングフック→右ハイキック→首締め」
となり、首を絞めてジャバールは絶命。。。。。。

最後の右ロングフックからハイキックを行う寸前のシーン
よく見ると大きく破れた障子の周りに小さな穴がたくさん開いています。

トドメのネックロック
(この写真は1回目のネックロックですが)。

〔闘いの終焉そして.....〕 

 グッタリするリー。「フー」と息を吐くテイクと吐かないテイクあり。
口を腕で拭き、その後ロングショットでジャバールの下敷きになった両足を抜きにかかります。
両手で腰を上げてまず右足を抜き、その右足でジャバールの腰を押して左足を抜きます。

立ち上がって破れ障子に歩いて行くところは、「レジェンド」と同じで別テイクなし。
そして破れ障子から外に向かって大声で叫ぶのですが、このシーンは「レジェンド」の「チャオメーイ!」orAKさんの
「死亡遊戯Ver3」の「You’re buster!」とも違うのです!

 勝手な日本語でデッチあげると、
「もう敵は全部倒したぞー、宝の地図がほしいなら自分で上がって取りに来いー!!」
位の長さがあるのです。そして障子の穴に耳をあて、2,3秒返事を待っています。
おそらく返事がないか、つまらない返事だったのでしょう。

もう一度穴から一言だけ叫ぶと、5階へ上がる階段には目もくれずに、よろけながらもダッダッダッと階段を降りてしまうのです
(ちょっとガニ股風に)。
そこから「レジェンド」にある通り、3階をよろけながら歩き、疲れ切った表情で2階へ。オワリ。。。。。


ではなくて、、、、(笑)、さらに3階から2階に降りてくるシーンがあったのです!!
2階に降りたリーは3階と同じようにフラフラと歩いていきますが、撮影している方向が3階と全く逆方向です。
つまり虎の椅子側から歩いていくリーをレールを使って撮影しているんです。

1階への階段まで来たリーは手で障子に2箇所の穴を開け、叫びます。
「チャオメーイ!」or「You’re buster!」のような感じで。
叫んだ後、一瞬返事がないか確認するように静止します。何も聞こえてきません。

するとリーは手でハエを払うような仕草をしながら、最初にバオとヌンチャクを持って駆け上がってきた階段を降りていきました。

 オ・シ・マ・イ!


●考察

リーのヌンチャクシーンはとにかくNG連発でした(最高10テイクもあり、でもそれぞれがめっちゃカッコよかったりします)。
それに比べてイノサントはカリやヌンチャクを落としたりするようなNGは確か全くなく、多くのテイクの中からカッコ良いものを
選ぶ為に撮っているという感じでした。
実はヌンチャク(タバクトヨク)の技術の巧拙ももちろんあったのでしょうが(師匠と弟子ですもんね)、リーとイノサントのヌンチャクの
ヒモの長さが倍近く違うことも影響していると思います。

ヌンチャクを自作したことのある“あなた”ならヒモの長さの違いによっていかに扱いづらくなるかは分かりますよね?
もちろんリーの方がヒモが長く、映像効果としては構えた時のカッコ良さで明らかにイノサントと差が出ています。
しかし、とにかくカッコよく、本当に高い実力を持っていることがおのずとわかるイノサント。

それに比べて池漢載やジャバ−ルは、強さの演出に若干ムリが見えました。
階を上がるごとに強い相手がいるという設定のためのムリというか、少し不自然な位です。

 池漢載は、投げのシーンで打ち込み(相手を投げるために自分がクルッと回ること)のキレや、力の入れ方の緩急が実にうまく、
ハプキドーの達人というのは本当だと思います。
しかし、力の抜き所を知っていすぎて、構えが棒立ちになっていたりするので緊張感がないんだと思います。

 まるで道場に新入門してきた道場生にベテランで年輩の先生が投げを指導しているような感じです。
現役武道家というよりは名のある指導者といった感じがプンプンとします。

 またハイスピード撮影のNG多発でわかるとおり、棒立ちから一旦膝をゆるめて腰を落とし、そして横っ飛びをするので、
これではタイミングが遅れるのは当たり前です。
この辺が監督であるリーにストレスを与えたんだと思います。

ジャッキー・チェンの「ヤングマスター」の黄仁植のように、ハプキドーの技である「間接技」、あるいはハプキドーにあるか
どうかわかりませんが「絞め」(直接腕で首を押さえつけて絞めたり、道着の襟をつかんで頸動脈をおさえて失神させる技)
をもっと多用したら強さの演出はもっと楽だし、おもしろかったのでは?と思います。
都合の良いことにヤラレ役である陳元は道着を着ていますから、絞めは容易にできたはずです。

 このことに関して、ラフカットの1階にいるはずの黄仁植も池漢載の弟子ですし、ハプキドーの達人ですから、1階で
そのような展開が想定されていたのでは?とも考えられます。

 ただ、リー直筆の設定メモには1階(本レポートでいう2階)に「Expert Kicker(蹴りの達人)」とあり、ここに黄仁植をあてる
はずだったことが読みとれ、ほとんど蹴りのみが用いられたであろうから、これはないと言えます。

また、池漢載が実は間接技、絞めが得意でないということも考えられますが、これもないと思います。

 もう一つ、リーが池漢載に間接技、絞めをほとんど使用させなかった理由として考えられるのは、間接技や絞めを極められ
ているリーが「絵」的にサマにならない、カッコ悪すぎるからではないかと考えられ、これが妥当な答えではなかろうかと思います。

 次にジャバールですが、はっきり言って彼の動きから判断して、強さの実力とか地力はまったく伺うことはできません。
本当の実戦ならローキック、膝関節を狙った正面からの間接蹴り、金的への攻撃を主体に寝技に持ち込まれ、リーに簡単にやられてしまうでしょう。



でも、「unknown」という設定、小説にあるバケモノのようでありながら、
ジークンドーと同様にあらゆる技に対処できるという設定を満たす
演技を、ジャバールには期待できません。

しかも以下の写真にある通り、ジャバールの顔、特に目はこの設定を
演じるには優しすぎます。











「試鏡」出演者オールキャスト。ジャバの目と表情は愛らしくさえ感じられる。

そこでリーは優しすぎる目を隠すため濃いサングラスをかけて迫力を出すことを考えつき、さらに指でつかむような構えなどで不気味さを演出しています。
でも暗い塔の中でサングラスをかけさせるのはちょっと不自然です。

そこでリーは思いついたのでしょう。“ジャバールをドラキュラにしてしまえ!”と。 これで不気味さの演出は十分です。
また、リーはアメリカ時代、道教や儒教を熱心に学んでおり、その中には“不遇の時にも未来を信じて、前進、努力すれば
必ずや光明が差し、道は開かれる”というような一節がありますが、この中に出てくる“光明”は、窮地に立ったリーを救い、
ジャバールの急所を暴く“光”そのものではないですか!
なんと哲学的なんでしょう!知れば知るほどブルース・リー先生の懐の深さを感じずにはいられません。

あとはリーと同様な武道の達人としての殺陣を演じる点でムリがありますが、これをカバーする意味でも西本正カメラマンの
手腕が発揮されたんだと思います。
足からなめるように見上げるショット等々、これで不気味さの演出は完璧です。

かくして不足面はありながらも「試鏡(試し撮り)」という形で撮影に入ったのでしょう。
ただ、目のシーンはあれでもいいですが、白目の部分を血走らせるとか、目から流血させるとかの工夫はほしかったなあと思います。
白目はホント真っ白でしたから。

●終わりに

 これで部分的にはしょりながらも、第2回ツアーの部分については概ねすべてを書きました。
ただ、NGやカチンコの記述内容、カチンコの陰に見えるリーやスタッフ達の姿などは、全然網羅できていません。


 
いくつかの雑誌に載ったジャバールのセットにてリーと
レイモンド・チョウが向かい合って立っている写真がありま
すが、あの映像が映った時はビックリしました。

















    一瞬とはいえ、これが動画で見れるとは...。


 また、ジャバールの安楽椅子に赤いタートルネックを着たチャップリン・チャンが座り、カメラ目線でカチンコを持っているシーンは笑えました。

 他には何度も画面に映るスタッフ?のおじいさん、陳元やイノサントの代わりに床に倒れてカチンコを持っているスタッフ。
ランニングシャツを着て掃除をしているオッチャン、カチンコを持つ手に火のついたタバコを持っているスタッフ(不謹慎な!)、
カチンコが映って撮影開始にもかかわらず、床にガンガン釘を打ってるオッチャン、
カチンコの陰でゴシゴシとバオをしごくリー(なぜか猛烈に早くしごいている)、ジャバールVS田俊戦の所で見られる
ラフカット唯一1回映る私服のリー(黒いTシャツ)、メイクさんに顔にドーラン?を塗ってもらっているリー等々まだまだいっぱいあります。


黒Tシャツを着たリー。

「これと同じ格好のリーがスタッフとともに映る映像があった。
この写真、ジャバールがまだロングガウンを着ていることから、
田俊がジャバールと出会うシーンの演出をしている所と思われる。
実際黒Tシャツのリーは田俊VSジャバール戦の時に見られた。」


ただ、ラフカットを見て「死亡遊戯」の撮影は明るい雰囲気で撮影されたこと、当たり前ながらもスタッフみんなが協力して
作っているんだなあということがわかって、とてもほほえましい印象を受けました。

 また、撮影の舞台裏として、死んでしまう役者の絶命シーンの撮り方(あらかじめ倒れていて腰or頭だけ浮かしていて
ガクッと倒れる)に感心したり、イノサントとリーがきっちりと立ち位置にいて、二人の周りにはたくさんのスタッフがいる
映像が一瞬映ったあと、スタッフだけがパッと消えて撮影シーンが始まるという当たり前のシーンを見れたことがうれしかったです。

後はリー直筆の脚本が完全公開されれば、死亡遊戯の塔のシーンについては全貌が明らかになります。
その日はいつ来るのか?


  チャップリン・チャンと脚本ノート?を手に打ち合わせをするリー。

最後にG.O.Dの竹田さん、近畿日本ツーリストの黒田さん、大丸商事の新井社長その他ツアー実施に尽力されたみなさん、
そしてともにツアーで至福の時を過ごした同士のみなさん。ありがとうございました!

※この内容は上映後のホテルの1室で、熊の爪さんによる全シーン、全テイク数記録を基本になにわBL倶楽部メンバーで
確認して作成したものに、帰国後メンバーによる再考察を加えて作成したものです。
みなさん ありがとうございました。

  また、掲示板にあったレインボーさんの情報なども一部引用させていただいています。
 時間が経つにつれ、間違い等も出てくると思います。

よろしかったら前回ツアーの老龍さんレポートのフォロー文のように追加投稿していただけたら幸いです。
御精読ありがとうございました!

「最後に長々と書いた文章をカッコよくアップしていただいたAKさんに感謝いたします。」

(2000.4.14UP)


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